地歌。三絃手事物。深草検校作曲。北沢勾当作詞。
宇治川に宇治の里人が布を晒す風景を、里謡風の歌詞で絵巻のように生き生きと描写したものです。宇治川と近辺の名勝の名と風景が美しく折り込まれています。
北沢勾当作詞作曲の「さらし(古さらし)(宇治川の布ざらしを歌った小編の小歌をつないで,間奏を入れて長歌としたもの。)」をその間奏部の器楽性を発展させたものです。最後の合の手を手事としますが、手事や三歌目の合の手が特に有名で、この手を取り入れたものに、『玉川』・山田流箏曲『春日詣』・『六玉川(箏組歌とは別曲)』・長唄『越後獅子』などがあり、布ざらしの描写に頻用されています。
【歌詞】
槇の島には、晒す麻布(あさぬの)。賊(しず)が仕業は、宇治川の、 浪か雪かと白妙に、いざ立ちいでて布晒す。 鵲(かささぎ)の渡せる橋の霜よりも、晒せる布に白味あり候。 のうのう山が見え候。朝日山に、霞たな引く景色は、 たとへ駿河の富士も物かは、富士も物かは。
小島が崎に寄る波に、寄る波に、月の光を映さばや、映さばや。 見わたせば、見わたせば、伏見、竹田に淀、 鳥羽もいづれ劣らぬ名所かな。
立つ波は、たつ波は、瀬々(ぜぜ)の網代(あじろ)に遮(さ)へられて、 流るる水を堰き止めよ、流るる水を堰き止めよ。 所がらとてな、所がらとてな。 布を手ごとに、槇の里人打ち連れて、戻らうやれ、賊が家へ。
【その他の演奏形式】