地歌(地唄)、京風手事物。菊岡検校作曲。八重崎検校の箏手付。
楫枕とは、楫を枕として寝る意から船中の旅寝を意味し,船の上で暮らす遊女たちの、悲しくもやるせない心情を歌った楽曲です。遊女の揺れ動く空しい心情を、舟上の仮寝に例え、いつか遠い将来には思い人と固く契りこの世界から逃れ出たいと願う内容です。数ある菊岡検校の作曲の中でも名曲といえます。
構成は、前唄-ツナギ・手事二段・トメ-後唄からなっており、手事は各段64拍子なので段合わせが可能です。本手と替手を一曲に含ませる作曲法の段返し手事物の最初の曲です。
【歌詞】
空艪(からろ)押す水の煙りの一かたに、靡(なび)きもやらぬ川竹の、
うきふし繁げき、繁げき浮寝の泊り舟。 よるよる身にぞ思ひ知る。 浪か涙か苫洩る露か、濡れにぞぬれしわが袖の、
絞る思ひをおしつつみ、流れ渡りに浮れて暮らす、心尽くしの楫枕。(手事)
さして行方の遠くとも、つひに寄る辺は岸の上の、松の根堅き契りをば、
せめて頼まん頼むは君に、心許して君が手に、繋ぎとめてよ、 千代よろづ代も。
【いろいろな演奏形式】
二重奏(三絃・尺八)~https://youtu.be/kgVfyLARgDU
二重奏(箏・尺八‥段合わせ)~https://youtu.be/WkJzbrTchkM
二重奏(箏・三絃)~https://youtu.be/x9KaqzyV6sY