地歌。手事物。謡い物。菊崎検校作曲。 「八重霞」(あるいは「越後獅子」)と「残月」とともに「シマ三つ物」又は「芸子三つ物」といわれます。派手な手事物の代表曲です。 謡曲「西行桜」の終わりの部分の一節を、そのまま歌詞としたものです。京都の名所、東山嵐山の桜を歌っています。歌舞伎下座にも「西行桜合方」として取り入れられています。内容は、西行の庵で古木の精が、桜の美しき名所を語るというものです。
【歌詞】
九重(ここのえ)に、咲けども花の八重桜、 幾代の春を重ぬらん、
しかるに花の名高きは、 まづ初花(はつはな)を急ぐなる、 近衛殿の糸桜、(合)
見渡せば柳桜をこきまぜて、 都は春の錦燦爛(にしきさんらん)たり、
千本の桜を植え置き、 その色、所の名に見する、千本の花盛り、
雲路の雪に残るらん、(合)
毘沙門堂の花盛り、 四天王の栄華も、これにはいかに勝るべき、
上なる黒谷下河原、 昔遍昭僧正の、(手事) 浮世を厭ひし華頂山、
鷲の御山の花の色、枯れにし鶴の林まで、 思ひ知られて哀れなり、(合)
清水寺の地主の花、 松吹く風の音羽山。(手事)
ここはまた嵐山、 戸無瀬(となせ)に落つる滝つ波までも、
花は大堰川(おおいかわ)、井堰(いぜき)に雪やかかるらん。
【その他の演奏形式】
二重奏(三絃・尺八)~https://youtu.be/nQppTKFWB0A
二重奏(三絃・箏)~https://youtu.be/hxG8r6O-yz4