地歌。三下り謡い物。藤尾勾当作曲。謡曲「八島」の詞章から作詞されたもので、謡とは無関係な内容も含まれています。平家物語の源平の戦いの修羅場などを、旅する西行法師が思い描いています。手事には砧地が用いられ、華やかな雰囲気から合奏会にも好まれる。替手は「西行法師~」から入ります。
*この曲は、序の「釣りの暇~朧月夜にしくものはなし」までで静まり返った瀬戸内海の水面が、一変して源平の戦いの修羅場となる場面を考えた演奏とすることの難しさを感じられる一曲です。
【歌詞】
釣のいとまもなみの上、霞み渡りて沖行くや、 海士の小舟のほのぼのと、見えてぞ残る夕暮に、[合]
浦風さへも長閑にて、しかも今宵は照りもせず、 曇りもやらぬ春の夜の、朧月夜にしくものはなし。[合]
西行法師のなげけとて、[合] 月やは物を思はする。闇は忍ぶによかよか。[合] うななぜ出たぞ、来そ来そ曇れ。[合]
又修羅道の閧の声、矢叫びの音震動して、[合] 今日の修羅の敵は誰そ。何、能登守範経とや。 あら、ものものしや手なみは知りぬ。[合]
思ひぞ出づる檀の浦の、その船軍今は早や。 閻浮(えんぶ)に[合] 帰へる生死の海山、[合] 一同に震動して、[合]
船よりは閧の声、陸(くが)には浪の楯、 月に白むは剣の光、潮に映るは兜の星の影。 水や空、空、行くもまた雲の波の、 打ち合ひ刺し違(ちが)ふる船軍のかけひき。浮き沈むとせし程に、又、春の夜の波より明けて、 敵と見えしは群れゐる鴎、閧の声と聞えしは、
浦風なりけり高松の、浦風なりけり高松の、 朝嵐とぞなりにける。
【その他の演奏形式】
一人弾き(替手)~https://youtu.be/e9FjPNJ-VQ0
二重奏(三絃+尺八)~https://youtu.be/1VZWUcS4mK8
二重奏(三絃+尺八)~https://youtu.be/StC8EMbgcgc