地歌(地唄)、京風手事物。菊岡検校作曲。八重崎検校の箏手付。三絃は二上り、箏は平調子。「前歌 – 手事 – 後歌 」という構成。
歌詞は源氏物語の第4帖『夕顔』をうたったものであるが、直接物語の筋をうたうのではなく、物語の背景を前提として詩的に自由に唄として創作したものである。歌詞のなかにある「白露、光を添えて」は、夕顔が詠んだ「心あてにそれかぞとみる白露の光そへたる夕顔の花」と源氏の返歌である「よりてこそそれかとも見めたそかれにほのぼの見つる夕顔の花」によっています。
夕顔は、別名に常夏(とこなつ、撫子の古名)の女とも呼ばれ、三位中将の娘で頭中将の側室、一女(玉鬘)を産むが、本妻の嫉妬を恐れて市井に紛れ、お互い素性を明かさずに光源氏の愛人となるが早世する。どこか儚げでそれでいて朗らかな性格から源氏にとっても理想の女性像の一つとして、死後もその面影を探すようになる。<源氏物語 第26帖に「撫子の 常夏かしき 色を見ば もとの垣根を 人や尋ねむ」があります。
手事では、虫の音すだく情趣を、夕顔の死を結句の余情で表現しています。小品ながら旋律が美しく、三味線・お箏ともによく工夫された名曲で、夕顔の儚さが投影されたもののあわれを感じさせる趣深い曲です。
【歌詞】
住むは誰。訪ひてやみんとたそがれに、 寄する車のおとづれも、
絶えてゆかしき中垣の、 隙間もとめて垣間見や。
かざす扇にたきしめし、空だきもののほのぼのと、 主は白露光を添へて、
いとど栄えある夕顔の、花に結びし仮寝の夢も、 覚めて身にしむ夜半の風。
【その他の演奏形式】
二重奏(三絃・尺八)~hthttps://youtu.be/71liW2YZD0U
二重奏(三絃・箏)~https://youtu.be/mUCDomJoxh4
三重奏(三絃・箏・尺八)~https://youtu.be/EeAMPVmNOt8